2024/06/03 2024/06/03
【ID24 林 大樹】ICUFCの良さとは何か
2023年10月で大学サッカーを完全引退した。時には楽しく、時には辛く、しかし、とにかく密度が濃かった日々に終止符を打ったのだ。この四年間を思い返すと、本当に色々なことがあり、一生残る思い出を幾度となく作ることができた。同時に、心から尊敬できる先輩方、なんにでも話せる関係の同期、少し不安ではあるが、これからの成長が楽しみでしかない後輩達などと、たくさんの仲間に恵まれた。ICUFCにいた四年間を通して、このチームが如何に特別なのかを実感することができた。したがって、ここでは僕が思うICUFCの良さを自分の経験を通して書こうと思う。
時を遡って、2020年4月。新型コロナウィルスの蔓延により、対面での部活動・サークル活動の禁止期間が続く中、ICUFCはzoom越しでの筋トレや座談会を開いていた。当時一年生であった僕はサッカーを続けようという思いが全くなく、入学当初はスムーズステッパーズにへの入部を検討していた。しかし、高校3年間一緒にサッカーを続けてきた仲間に誘われ、ICUFCのオンライン筋トレ会に参加することになった。筋トレの内容は全く覚えていないがチーム全員が笑顔で、気づいたら自分も満面の笑みになっていたことを鮮明に覚えている。これまでのサッカー人生でここまで暖かい雰囲気のチームは初めであった。実際の練習に参加したわけでもないのに入部したいと思った。ただ単に自粛で暇だったからかもしれない。久しぶりに家族以外の人と話して楽しかったからかもしれない。理由はどうであれ僕はこの日、心の底から「このチームに入りたい」と感じた。
これが僕のICUFCとの出会いである。
そして、2020年9月。秋学期が始まり、ついに部活動が再会された。ハイで知っていたメンツを除いて、初めて画面越しで話したICUFCのみんなと出会うことができ、和気藹々とした雰囲気に改めて魅了された。しかし、練習が日々進む中、僕は練習についていくので必死になっていた。それもそのはず。高校でも主力選手とは程遠い存在だった僕が大学に入ってすぐチームに順応することは無理難題そのものであった。部活は楽しかったし、辞めたいと思ったことも一度もなかったが、心のどこかで「足を引っ張っていないか」を気にし始めるようになった。
約4ヶ月が経ち、ICUFCは4部優勝、3部昇格の快挙を果たし、新シーズンに向けて始動していた。22の先輩方が引退し、部員数がガサっと減ったせいか、毎日の練習が少し静かになった。今までは先輩達が率先して声を出し、練習で必要不可欠のバイタリティを作っていたが、いざいなくなると先輩方の偉大さを実感した。今読んでいる後輩達は信じられないかもしれないが、僕は昔あまり声を出すような人間ではなかった。静かとまではいかないが、みんながよく知っている奇声に近い声出しは全くしていなかったのだ。当時は特に何か理由があったわけではなかったが、今思い返すとおそらく僕は軽蔑されるのを恐れていたのかもしれない。ギリギリ練習についていけている、ついていけないの線を彷徨っている下手くそが声を出して雰囲気を盛り上げるとか頭おかしいのかと。ボールもまともに蹴れない奴が一丁前に声出すとか周りに笑われて終わるだけだと。声を出すことに躊躇っていたのは心の底で周りの目を必要以上に気にていたからだろう。しかし、このまま特に特徴もなくチームのモブキャラとして部活を続けるのはなんだか勿体ない気がした。だから僕はチームの大音量発人間メガホンになることにした。
最初はアップで人よりちょっと大きな声で叫ぶことから初め、少しずつ勇気を出してロンドやゲームでも声を出すようになった。少し恥ずかしかったが声を出す度に躊躇いがなくなっていった。だが、何も恐れずに大きな声を出せるようになった本当の理由は監督や23の先輩方であった。「やってこう!!!」と言うと、誰かしら「ダイキありがとう!」という声が聞こえた。いい意味で想定していたリアクションと違ってとても嬉しかった。自分が恐れていた軽蔑と対極の反応は驚くほど心地よいものであった。それから僕は積極的に声を出すようになった。恥じらいなど一切忘れて、思いっきり叫んだ。すると、思いの外感謝の声を次々と貰うようになった。あの日から一年経たないうちに僕は「声出し隊長」などと呼ばれ、「声出しキャラ」が定着した。
もちろん、中には「なんだあいつ」と思う者もいたかもしれない。引退まで声だけが取り柄の奴だと思われたかもしれない。なにがどうであれ、僕が声出すだけで少しでも「頑張ろう」と思ってくれた人がいたなら後悔はない。これが僕がICUFCのためにできることであるから。
長くなったが、これこそがICUFCの本当の良さだと僕は思う。アットホームな雰囲気やチームとしての一体感はもちろんICUFCの強みであり、簡単に真似することができない真っ当な文化ではあるが、これらは仲間の試みを暖かく受け入れる寛容な態度があってこそのものだと考えている。仲間の「やってみよう」を決してさげしむことなく寧ろ、「いいね面白そう」と受け入れてくれる心の広さ。それがICUFCの真髄であり、最大の強みであるのだ。僕はそんなチームの一員になれたことを誇りに思う。だからこそ、今後のICUFCが楽しみだ。スポンサー契約や審判派遣、様々な課題を乗り越える必要があると思う。しかしそういう状況下に置かれてこそ意外な部員が率先してチームのために動こうとするかもしれない。もしそのようなことがあれば、是非応援してあげて欲しい。案外チームにとって良い影響をもたらすかもしれないから。
林大樹